天然芝が変える外野手グローブ選び――ポケットと翼幅の最適解
天然芝球場でフライを追う瞬間、外野手の視界には空と緑しか映りません。けれどボールが地を這えば、一転して芝が主役になります。プロがグローブを選ぶ際、「ポケットの深さ」と「たたみ方」を重視するのは定番ですが、天然芝をホームとする選手はさらに「低姿勢での捕球安定性」を突き詰めます。芝のわずかな凹凸が打球を左右へ揺らし、蛇行する“スネークゴロ”へと変えるからです。全力疾走のまま拾うには、グローブを地表すれすれに滑らせても抵抗が少なく、手首の角度に無理がない設計が欠かせません。
ここで要となるのがウイングスパン、すなわち腕の長さと地面までの距離のバランス。
前傾して腰を折れば肩が下がり、拳は想像以上に芝に近づきます。ポケットが深すぎると芝を掻き込み、握り替えが遅れる一因に。逆に浅すぎればスネークしたゴロを弾きます。理想は指先から手首にかけてゆるく折れる“半筒型”。閉じたとき親指と小指が自然に重なり、中央が20〜22ミリほど沈むモデルが多くの外野手に評価されています。
革質も見逃せません。
天然芝は土より湿度を含むため、午前の練習で水分を吸った革が午後には軟化します。硬めのステアを選び、型付けで内側だけをほぐしておけば、試合中でも輪郭を維持できます。また紐はケブラーやオイルレースのように伸びにくい素材を。横方向のブレを抑え、前傾捕球でもポケットが開きすぎるのを防ぎます。
サイズ目安は12.5〜13インチ。
ただし身長180センチ超で深い前傾を取る選手なら13.25インチを選び、指先を削ってバランスを調整する例も。購入前にはティーで低いライナーを連続捕球し、「走りながら拾う」動作を再現してください。弾いた打球がグローブのどこを滑ったか――そこに改善のヒントがあります。
最後にポケットメンテの小技をひとつ。
試合後、ボールを挟んで縦に畳み、リストバンドで軽く巻いて一晩置く。天然芝の湿気を含んだ革が自重で落ち着き、ポケット中央に“くぼみの記憶”が刻まれます。その積み重ねが、芝のスネークを吸い込む安全地帯を育てるのです。外野を守るあなたの一歩目を速くするのは、準備されたグローブ。芝と対話できる一本を、ぜひ慎重に選び抜いてください。

