土手の縫製と型付け――1ミリが捕球音を決める
グローブのど真ん中にある『土手』は、ボールの衝撃を受け止めつつ開閉をスムーズにする要です。
まず0.8㎜のポリエステル強撚糸を用い、ミシンは1インチ(約2.5 cm)で11針というテンポで走らせます。
粗いと革がヨレ、細かすぎると糸が埋もれるため、職人はミシン音をドラムのリズムのように聴き、針足をこまめに調整しています。
縫製が終わると、自動ハンマーのテーブルに載せてカンカンと均等に叩きます。機械だからこその一定圧で繊維がギュッと締まり、衝撃が面で拡散。捕球時に「カーン!」という抜けのいい音が生まれます。圧力と時間を数値で管理し、革を傷めないギリギリを攻めるのが腕の見せどころです。
続いて型付け。55 ℃の温風で革を温め、専用プレスで土手をわずか5度内側に折ります。この小さな角度が開閉スピードをグンと上げる秘訣。冷めたら木球でポケットを押し込み、蒸気を当てながら揉み込むと、革が手の形を覚えてくれます。
1ミリの縫い幅、1秒の熱、1度の角度――数字の世界を突き詰めることで、手を入れた瞬間に“吸い付く”グローブが完成します。地味だけど、試合の行方を左右する大切な職人芸です。